車いすのジャズピアニスト、演奏再開「今度は誰かを救いたい」(産経新聞)
【ゆうゆうLife】病と生きる ジャズピアニスト・中村新史さん(36)
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ジャズピアニストの中村新史さんは2年前、自己免疫性脳脊髄(せきずい)炎にかかり、下半身まひで車いす生活を余儀なくされた。10カ月の入院生活を経て、リハビリをしながら今年1月から演奏活動を再開。高次脳機能障害も抱える中、音楽仲間の支援とジャズへの情熱を支えに“車いすのジャズピアニスト”として新たなスタートを切った。(文 小川真由美)
発病は2年前の4月。バリカンで散髪した翌日に熱を出して、そのときは「頭が涼しくなって風邪をひいたかな」と思っていた。点滴をしても熱は下がらず、尿が出なくなった。変だなと思って行った大きな病院でも尿検査では異常が見つからず、結局、脳のCT検査をして病名が分かりました。
一時は意識不明になって集中治療室に3週間いて大変な事態だったのですが、実は僕は病院でのことをほとんど覚えていない。周りに聞いた話では、集中治療室で意識がないのに鍵盤に手を置くとかすかに動いたそうです。
意識が回復したのは6月。目覚めたときは1時間くらい昼寝をしていたような感覚で、「何でおれ、病院で寝ているんだろう」と。足がまひしているのはすぐに分かったのですが、そのうちに動くようになると。今思えば、両手の指はすぐに動いたから深刻にならなかった。
《中村さんは大学在学中にジャズと出合い、ライブハウスを中心にプロ活動を開始。宇崎竜童や岩城滉一、TOKU、松崎ナオなどさまざまなジャンルの音楽家と仕事をしてきた》
□ ■ □
幼少時代に母からピアノを教わり、中学生まではクラシック音楽を習い、高校でベースやドラムを覚えました。大学時代にハービー・ハンコックやセロニアス・モンク、ビル・エバンスなどジャズにはまってしまい、企業に就職して働く人生は自分には無理だと悟った(笑)。
社会人になりたくなかったので大学院に進学しようと試験に合格していたのですが、卒業に必要な単位を取り損ねて留年。同級生より半年遅れで卒業となり、自然と音楽漬けの生活になっていました。
《入院して4カ月後、医者から「車いすの生活になる覚悟をしてください」と宣告された》
ピアノの演奏以前にどう生活していけばいいのか混乱し、参ったなと。正直、今も病気のことを完全に受け入れられたわけじゃない。近くの物を取るとか、何気ない動作も時間がかかり、自分のペースで生活できないのが一番苦しい。一人になると、「なんで自分なんだ」「ふざけんな」と落ち込むこともある。誰のせいでもないからたまに神様に八つ当たりしてます(笑)。
《ピアノ演奏に欠かせないペダル操作は中村さんの音楽仲間が募金で資金を集め、手作りで装置を開発。子供用の補助ペダルに取り付けたワイヤを上半身の力で引き上げて演奏する。不自由な体で即興演奏の多いジャズを弾きこなそうと奮闘する日々だ》
□ ■ □
鍵盤に体重をかけるように演奏しながら、逆に体を起こしてペダルを操作するのは難しい。ピアノと一から対話を始めている感じです。世間には「車いすの中村は本当にピアノを弾けるのか」と思う人もいる。理想の演奏でなくても今年は人前でどんどん演奏して復活をアピールしたい。
病気になってたくさんの人が病や介護、困難の中で頑張っていることを知った。僕は不幸中の幸いで、ピアノを弾く指には何も障害がなく、ラッキーです。
今後は、病院や介護施設など生演奏を聴きに出かけられない人がいる場所にも行ってピアノを弾きたい。音楽で僕が救われたように、僕の演奏で誰かを少しでも楽しい気分にしていきたいと思っています。
【プロフィル】中村新史
なかむら・しんじ 昭和49年、千葉県生まれ。平成9年、慶応大学総合政策学部卒業。大学在学中からジャズピアニストとしてプロ活動を始め、多くの音楽家と共演。今月11日、東京・中野の「OrganJazz倶楽部」で演奏会を開く。
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発病は2年前の4月。バリカンで散髪した翌日に熱を出して、そのときは「頭が涼しくなって風邪をひいたかな」と思っていた。点滴をしても熱は下がらず、尿が出なくなった。変だなと思って行った大きな病院でも尿検査では異常が見つからず、結局、脳のCT検査をして病名が分かりました。
一時は意識不明になって集中治療室に3週間いて大変な事態だったのですが、実は僕は病院でのことをほとんど覚えていない。周りに聞いた話では、集中治療室で意識がないのに鍵盤に手を置くとかすかに動いたそうです。
意識が回復したのは6月。目覚めたときは1時間くらい昼寝をしていたような感覚で、「何でおれ、病院で寝ているんだろう」と。足がまひしているのはすぐに分かったのですが、そのうちに動くようになると。今思えば、両手の指はすぐに動いたから深刻にならなかった。
《中村さんは大学在学中にジャズと出合い、ライブハウスを中心にプロ活動を開始。宇崎竜童や岩城滉一、TOKU、松崎ナオなどさまざまなジャンルの音楽家と仕事をしてきた》
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幼少時代に母からピアノを教わり、中学生まではクラシック音楽を習い、高校でベースやドラムを覚えました。大学時代にハービー・ハンコックやセロニアス・モンク、ビル・エバンスなどジャズにはまってしまい、企業に就職して働く人生は自分には無理だと悟った(笑)。
社会人になりたくなかったので大学院に進学しようと試験に合格していたのですが、卒業に必要な単位を取り損ねて留年。同級生より半年遅れで卒業となり、自然と音楽漬けの生活になっていました。
《入院して4カ月後、医者から「車いすの生活になる覚悟をしてください」と宣告された》
ピアノの演奏以前にどう生活していけばいいのか混乱し、参ったなと。正直、今も病気のことを完全に受け入れられたわけじゃない。近くの物を取るとか、何気ない動作も時間がかかり、自分のペースで生活できないのが一番苦しい。一人になると、「なんで自分なんだ」「ふざけんな」と落ち込むこともある。誰のせいでもないからたまに神様に八つ当たりしてます(笑)。
《ピアノ演奏に欠かせないペダル操作は中村さんの音楽仲間が募金で資金を集め、手作りで装置を開発。子供用の補助ペダルに取り付けたワイヤを上半身の力で引き上げて演奏する。不自由な体で即興演奏の多いジャズを弾きこなそうと奮闘する日々だ》
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鍵盤に体重をかけるように演奏しながら、逆に体を起こしてペダルを操作するのは難しい。ピアノと一から対話を始めている感じです。世間には「車いすの中村は本当にピアノを弾けるのか」と思う人もいる。理想の演奏でなくても今年は人前でどんどん演奏して復活をアピールしたい。
病気になってたくさんの人が病や介護、困難の中で頑張っていることを知った。僕は不幸中の幸いで、ピアノを弾く指には何も障害がなく、ラッキーです。
今後は、病院や介護施設など生演奏を聴きに出かけられない人がいる場所にも行ってピアノを弾きたい。音楽で僕が救われたように、僕の演奏で誰かを少しでも楽しい気分にしていきたいと思っています。
【プロフィル】中村新史
なかむら・しんじ 昭和49年、千葉県生まれ。平成9年、慶応大学総合政策学部卒業。大学在学中からジャズピアニストとしてプロ活動を始め、多くの音楽家と共演。今月11日、東京・中野の「OrganJazz倶楽部」で演奏会を開く。
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2010-04-14 17:04
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